最近、両親(もしくは祖父母)の歩き方が変かも?
高齢者の歩き方って、若者とどう違うの?
どんなアドバイスをしたらいいんだろう?
こういった疑問にお答えします。
※本記事は、股・膝関節に大きな可動域制限がないことを前提に書いています。
高齢者の歩き方を改善する方法
高齢者の歩き方を改善するには、
- 声かけ
- 簡単な筋トレ
この2つのがとても有効です。
本記事の信頼性
この記事を書いた人:加藤 敏也(理学療法士)
普段は理学療法士として働いており、今年で10年目となります。
理学療法士とは患者さんのリハビリをする仕事であり、主な治療の分野は、整形外科・脳血管疾患です。
そのどちらの分野にも共通する”歩行”という動作は、理学療法士が最も得意とする分野で、これまで数多くの方の歩行観察・リハビリ・指導をさせてもらいました。
この記事で正しい歩行姿勢・高齢者に出やすい歩行の特徴・アドバイス方法を学び、役立てていただけたらと思います。
高齢者の歩行の特徴4つ
「声かけ」と「筋トレ」で歩き方を矯正できる理由は、高齢者の歩き方に以下のような特徴があるからです。
- 歩く速度が遅くなる
- 物につまづきやすくなる
- 前傾姿勢になってしまう
- 腕の振りが小さくなる
加齢に伴う筋力・運動能力の低下により、歩行動作にこれらの変化が生じます。
実際にリハビリの現場でも、これら4つの要素を
- 声かけ
- 簡単な筋トレ
を用いて改善していきます。
そしてこれらは、ご家庭でも実践できる事ばかりです。
ぜひ参考にしてみてください。
1、歩く速度が遅くなる
1番最初に影響を受けるのが「歩く速度」です。
歩幅の減少がダイレクトに影響を与える為、歩く速度が落ちてしまいます。
そして速度の低下は転倒のリスクが上がります。
速度の基準は文献により様々ですが”0.8m/秒”がひとつの基準であり、それ以下となると転倒リスクが上がります。
(正常値とされている速度は”1〜1.2m/秒”)
早すぎにも注意!
逆に”1.3m/秒”以上の速さで歩くと転倒リスクが上がるとの報告もあるので、気を付けてください。
(参考文献:歩行速度と転倒の間の非線形関係)
※歩く速度の基準は文献により様々であり、参考文献と一部異なる数値を使用している所もあります。
声かけのポイント
「普段より少し歩幅を大きくしよう」
「腕の振りを大きく」
と声をかけましょう。
腕の振りを大きくすると、自然に足が出やすくなります。
簡単な筋トレ
股関節のつけ根の筋肉(腸腰筋):
座った状態での足踏み。余裕があれば重りつけるのもOK。
お尻・太ももの裏・ふくらはぎの筋肉:
一気に鍛えられるスクワットがオススメ。
膝などが痛くスクワットができない方は、個別に鍛えるのもOK。
お尻上げ:仰向けに寝て、両膝を立て、お尻をあげる。
背伸び:立った状態からかかとを上げ、つま先立ちになる。
2、物につまずきやすくなる
加齢による筋力低下によって足の上りが悪くなり、物につまずきやすくなります。
当然、転倒のリスクも増えるため、改善が必要です。
声かけのポイント
かかとから地面に着くように声をかけましょう。
「足の裏を前方に見せるように」
と声をかけるとうまく出来る事が多いです。
簡単な筋トレ
すねの筋肉(前脛骨筋):
座った状態で繰り返しつま先あげ。
余裕があれば誰かに上から押さえてもらいながらやるのもOK。
太ももの裏の筋肉(ハムストリングス)
座った状態で繰り返し膝を曲げる。
3、前傾姿勢になってしまう
前傾姿勢になってしまう原因には
- 体幹の筋力低下
- 加齢による骨の変形
- 転倒の不安により視線が下がる
などが挙げられます。
前傾姿勢はバランスを崩しやすくなってしまうので、改善したいポイントです。
声かけのポイント
「胸を張って」
「おへそを突き出して」
のように声をかけましょう。
(体が反りすぎるのはNG)
前方の建物など、何かを見ながら歩くよう声をかけましょう。(足場が良い場所で行ってください)
簡単な筋トレ
背筋群
背筋を伸ばして座り、両肘を90°に曲げ後ろへ引く。(肩甲骨をグイッと中央へ引き寄せる。)
うつ伏せの状態から、両手・両肘を付き、体を反らす。(痛みがある場合は無理しないように)
こちらはレッツリハさんのコラムでとてもわかりやすくやり方を解説されていますので、参考にしてみてください。
レッツリハさん介護予防コラム→背中が曲がる「円背」。その対策とは?
(画像お借りしました!)
4、腕の振りが小さくなる
歩行時における腕振りは重要な役割を果たしており
- 歩幅の増大
- 振り出している・地面に着く際のつま先角度の増大
- 体幹の安定性の増大
など、これまで述べてきた全ての要素に関わってきます。
腕の振りを意識する事で、転倒予防に繋がるのです。
声かけのポイント
腕を大げさに振る必要はありません。
腕の振りというよりは、上半身のひねりを意識するよう声をかけましょう。
そうする事で自然と腕が振れるようになります。
簡単な筋トレ
立った状態で腕を下に伸ばし、その場で素早く腕を振ります。
これを歩く前に30回ほどやると、歩く際に腕の振りがスムーズになります。
まとめ
いかがだったでしょうか。
加齢による歩行の変化は、転倒リスクを徐々に高めていきます。
しかも高齢者の転倒は、骨折・入院へと繋がりやすく、ご本人やそのご家族への負担がとても大きく辛いものです。
あなたのご両親または祖父母の方でこれらの特徴が出ていれば、ぜひとも声かけや筋トレをしていただけたらと思います。
特徴が出ていなくても、高齢者の能力の低下はとても早いです。
運動不足にならないよう、注意しておきたいですね。
それでは!